ごましお(@okowa1215)です。
大村 大次郎氏の『相続税を払う奴はバカ! 本当の金持ちは税金など払わない』を読んでみたので感想など。
なかなかキャッチーな名前の本ですよね。
元国税局調査官
筆者である大村 大次郎氏は、調査官として国税局に10年間も勤務した税務のプロです。
国税局を退職後に様々な執筆活動をされていて、「脱税」を中心とした税金、法律、ビジネス関係を中心に執筆しているとのことです。
税務のプロだった人が「脱税」について教えてくれるんですから、筆者の著作を読まない手はありませんねw
「資産運用」や「株式投資」と「税金」は切っても切れない関係です。
新NISAでは税金は関係ありませんが、特定口座で運用している場合には「税金」の正しい知識がないと、もしかすると損をしているかもしれません。
ちゃんと勉強しようと思ってこの本を手に取ってみたわけです。
相続税をまともに払う金持ちはいない!?
この本の内容は、簡単に言えば本当の金持ち(小金持ちではなくて)は、あらゆる方法を使って相続税を逃れていて、その方法について紹介するものです。
というのも、大金持ちのほとんどはまともに相続税を払っていないのである。何十億、何百億もの遺産をもらっている大企業の創業者や、大地主、大投資家などの遺族は、あの手この手を使って相続税を逃れている。現在の税法では、相続税の最高税率は55%である。しかし、55%の税金を納めている大金持ちなどはほとんどおらず、10%も納めていない者ばかりなのである。
『相続税を払う奴はバカ!』 はじめに
筆者によると、毎年相続される遺産は少なくても50兆円程度あるそうです。
しかし、相続税として徴収されているのは毎年2兆円程度なんだとか。
相続税の最高税率は55%(6億円以上)ですから、もっと税収があってもよい計算になります。
でも遺産全体の2%ほどしか税金が徴収されていないということは、それだけ払っていない人が多いから!
こんな話を聞くと税金を真面目に払うのがばからしくなりますよね~。
節税・逃税のスキーム
本当の金持ちたちは相続税をあの手この手を使って逃れているのですが、決して違法な脱税をしているわけではありません。
法の抜け穴をかいくぐって節税・逃税をしているのです。
本書では2~6章にかけて、それら金持ちの以下のような絶税・逃税スキームを紹介しています。
- タックスヘイブン
- 高級マンションの購入
- 一般社団法人の設立
- 生命保険などの「タックスシェルター」
- 孫を養子に
- 非上場会社と「事業継承税制」
- 地主とプライベートカンパニー
などなど。
いろんな税金逃れの方法があるんですね。
面白いというか、そりゃそうだろなって思ったのが、金持ちの相続税を回避するために手を貸してくれる人がたくさんいるということです。
例えば税理士が一番わかりやすいですが、それが商売のネタの1つになっています。
金持ち側も節税できるし、税理士側も契約金が入ってwin-winな関係ですもんね。
また保険会社なんかも同じ構図です。
節税になるような保険商品を作ってしまうのです。
そうすれば保険会社には多額の保険金が入ってきますし金持ちもウハウハで相続できる。
世の中うまくできていますよ。
一般社団法人の項で筆者は、
そもそも、社団法人の制度自体がなんのためにあるのか、よくわからない。
『相続税を払う奴はバカ!』 p85
って言っていますw
「社団法人の存在自体が資産家のための逃税スキームである」とまで言っています。
資産家の支持を得たい自〇党がやりそうなことですよね。
重要なのは後半部分
本書の前半は、金持ちが如何にして相続税を逃れているかを説明していますが、はっきり言って「本当の金持ち」ではない私たちには関係がありません。
だって逃税スキームを実施すること自体に莫大なお金が必要になって、私の資産なんてなくなってしまいますからね。
これらはあくまで大金持ち(資産数十億円とか数百億円)が活用する方法なのです。
では、私たちのような「普通の人」や「小金持ち」がどうすべきなのか?
それを紹介しているのが本書の後半部分です。
相続税の計算方法をしっかり確認!
相続税には基礎控除3000万円と(法定)相続人1人当たり600万円という控除があります。
例えば妻と子供2人が死亡した夫の資産を相続する場合、
- 基礎控除 3000万円
- 妻 600万円
- 子供×2 1200万円
- 合計 4800万円
となり、相続資産が4800万円以内なら税金はかかりません!
案外大きな金額が控除されるので、多額の相続税を支払わなくてはならないといったイメージは間違いです。
資産額が1億円程度ならば、変に相続税対策なんてするよりも素直に相続税を払ってしまったほうが安上がりになりますね。
また、配偶者には1億6000万円まで相続税がかからないという、とても大きな控除があります。
我が家のように資産を残す子供がおらず、最終的に私の資産が妻に相続されたとしても、1億6000万円を超えていなければまったく心配ありません。
オルカン2億円を妻に相続したら?
私の資産運用が成功裏に進んで、2億円分のオルカンを積み上げた状態で相続発生したとします。
配偶者には1億6000万円までの控除がありますので、2億円ー1億6000万円=4000万円に相続税がかかります。
課税資産額 | 税 率 | 控除額 |
---|---|---|
~1000万円 | 10% | なし |
~3000万円 | 15% | 50万円 |
~5000万円 | 20% | 200万円 |
~1億円 | 30% | 700万円 |
~2億円 | 40% | 1700万円 |
~3億円 | 45% | 2700万円 |
~6億円 | 50% | 4200万円 |
6億円以上 | 55% | 7200万円 |
4000万円の相続税率は20%、控除額は200万円ですので相続税は4000×0.2-200=600万円となります。
2億円を相続して600万円を税金として支払う。
この600万円を逃れるためにマンションを購入したり、海外に移住したりするのは割に合わないですねw
自分の場合はどうなのか?
自分が相続税を支払う側(相続を受ける側)だとしても、親に莫大な資産がない限り相続税なんて心配する必要はなさそうです。
自分の場合はどの程度の相続税が必要なのか?

ある程度の把握を事前にしておけば、私たち庶民が何か対策を考える必要はないでしょう。
相続税ってなんのため??
「普通の人」「小金持ち」である私たちには相続税の恐怖など、あまり関係ないことはわかりました。
でも、そもそもこの相続税ってなんのためにあるのでしょうか?
相続した財産の一部を国に納めていただき、広く社会のために使うことになるので、相続税には、資産を再分配する機能があります。また、相続した財産が大きいほど相続税額は大きくなるので、生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、格差の固定化を防止する機能もあります。
財務省のHPには、相続税の効果として「資産の再分配」「格差の固定の防止」の機能があると記載されています。
しかし、本書を読めば理解できるように、その機能はまったく果たされていません。
本来得られるはずの税収の2%程度しか徴収できていないという現状は最初に記載したとおりです。
毎年2兆円程度の税収ならば、いっその事廃止してしまったらどうでしょうか?
本書では富裕税の導入を提言
本書では相続税の代わりに富裕税の導入を提言しています。
毎年の保有資産に対して、その1%を税金として納めてもらう。
相続税はないのですから、本書の前半で説明されていたさまざまな節税・逃税スキームは一切不要になります。
そもそも、行きたくもない海外に行ったり、買う必要もない高級マンションを節税のために購入することは、経済合理性に反しています。
自分を資産を誰にでも自由に相続させることができる!
しかも、税金の支払いを一切考慮することなしに!
そしてそのお金が正しい使われ方をすれば、よりよい日本になる可能性はあるのではないでしょうか?
まあ「相続税を廃止する!」なんて公約を、どの政党、どの政治家も公言することはできないでしょうが、、、
さいごに
今回は、大村 大次郎氏の『相続税を払う奴はバカ! 本当の金持ちは税金など払わない』を読んでみた感想などをツラツラ記事にしてみました。
筆者の他の著作にも、資産運用にとっても大切なことを教えてくれるものがたくさんあります。
とってもわかりやすい文章で、まったくの初心者でも苦手意識なく読めるものだと思います。
興味をお持ちの方はぜひ手に取ってみてください。


タックスヘイブンのケイマン諸島とかバハマとかは旅行で行ってみたいですね。
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