ごましお(@okowa1215)です。
日経新聞に掲載されていた新NISAの成長投資枠リターンランキング。
こちらの記事で取り上げてみました。
年初来リターンランキングの1位に輝いた「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、設定から13年で14倍になっています。
100万円分購入したら1400万円になっている計算です!
凄い!!
ランキング1位の実力やいかに!?
この「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は年初来リターン(9月末時点)が48.45%です。
オルカンの年来リターンが20.03%、スリムS&P500が22.39%です。
10か月間という短い期間の比較ですが、オルカンの2倍以上リターンを叩き出しています。
現在はもっと成長!
2009年の設定から2024年11月1日までのチャートです。
11月1日現在では15.7倍になっていますw
期間を過去3年ほどにしてみると、2024年1月からの新NISAに合わせて純資産総額が急上昇しているのがわかります。
とっても売れているファンドですね。
なぜこんなに売れているのか?
当然成長力ももちろんですが、毎年6月の決済に合わせてしっかり分配金も得ることができます。
設定から13年で10,000口あたり25,625円の分配金を出しています。
設定日に100万円分を購入していたとすると、256万円の分配金を得たことになります。
これまた凄い!!
基準価額の上昇にともなって分配金の額も急上昇しています。
設定がリーマンショックの記憶も新しい2009年
この投資信託が設定されたのが2009年8月27日です。
2009年といえばあのリーマンショックが発生した次の年です。
この投資信託は世界の半導体株企業に投資するものですが、半導体関連企業の代表的な指数として「SOX指数」というのがあります。
SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)とは、半導体の製造・流通・販売を手掛ける企業(インテル、AMD、クアルコムなど30銘柄)の株式で構成される単純平均株価指数で、アメリカのフィラデルフィア証券取引所が算出・公表しています。
1993年12月1日を基準値100(当初200だったが1995年に1/2に分割された。)として算出され、半導体関連の代表的な指数とされており、日本の半導体関連株にも大きな影響を与える指数です。
この「SOX指数」ですが、2009年当時の状況としては2007年の高値(549)からリーマンショックによって167まで暴落します。
↑SOX指数(2007-2011)
ファンドが設定された2009年8月はまだまだリーマンショックの影響が残る中です。
そんな状況の中でこのファンドを設定した野村AMの先見の明は凄いですね。
そして、それを購入して今まで保有している投資家がいるなら、それこそ投資家の鏡ですね。
ちょっと面白いアクティブファンドです。
この投資信託ですが、ちょっと面白い(?)のがアクティブファンドでありながらベンチマークを設定しているところ。
MSCI All Country World Semiconductors & Semiconductor Equipment(税引後配当込み・円換算ベース)という、世界の半導体関連企業の株式を対象としたインデックスをベンチマークとして設定しています。
そしてこのベンチマークを基本としながら、その内容に変化を加えて運用を行っているのです。
月報の内容を確認すると、野村アセットマネジメントが独自の色を付けている様子が良くわかります。
月間の基準価額(分配金再投資)の騰落率は+1.64%となり、ベンチマーク騰落率の+2.58%を0.94ポイント下回りました。ベンチマーク対比では、株価騰落率がベンチマークを上回った米国の半導体・半導体製造装置株をアンダーウェイト(ベンチマークに比べ低めの投資比率)としたことなどやベンチマークを下回ったオランダの半導体・半導体製造装置株をオーバーウェイト(ベンチマークに比べ高めの投資比率)としたことなどがマイナスに影響しました。
2024年10月の月報の記載ですが、ベンチマークに負けた理由をちゃんと記載しています。
ベンチマークに比べて「米国の株を少なくし、オランダの株を多めにしちゃったので負けちゃいましたw」
ってのが野村さんの正直な告白です。
これまでの騰落率を比較した表も記載されていました。
設定来で見てみると、ベンチマークに結構な差で負けています。
(ベンチマークは約28倍、ファンドは約23倍です。)
これは、野村AMさんが「いらん事(=独自の運用)」をしなければもっと利益が出ていたってことですw
まあ、その「いらん事」をすることで野村AMさんは(高額な)手数料を貰っているのですがね。
もう少しマニアックに!
この騰落率についてもう少し。
↑こちらの記事でも取り上げましたが、ファンドの騰落率は「基準価格(配当金再投資)」で計算されています。
これは、実際には払い出されている配当金が、払い出されなかったものとして計算した基準価格と騰落率です。
実際に配当金が払い出されると利益に対して税金が引かれます。
必ず引かれる税金が「なかったもの」として計算されたのが「基準価格(配当金再投資)」なのです。
対してベンチマークは「税引後配当込み、円換算ベース」で計算されています。
比較するベンチマークはちゃんと税金を計算したもの(少なくなる)とする。
自分が運用しているファンドは税金を無視したもの(多くなる)とする。
ですので、実際にはこのファンドの騰落率ってもっと少なくなるはずです。
ちなみに
オルカンやスリムS&P500の騰落率も基準価格(分配金再投資)で計算されています。
しかし、そもそも分配金を払っていないオルカンやスリムS&P500では、この分配金を再投資した基準価格と本来の基準価格は同じになります。
(無分配投資信託はその内部で分配金を無税で再投資しており、それが複利の源泉になっているのです。)
投資信託の実力を比較する場合に、この基準価格(分配金再投資)が使われますがちょっと注意が必要ですね。
実際の利益を計算してみた。
実際にはありえない計算方法で算出されているのが、このファンドの騰落率です。
分配金を出す投資信託と、出さない(無分配)の投資信託の実力を比べるためにこの分配金を再投資した(と仮定した)基準価格を使っています。
しかし、私たち投資家側からしてみると、実際に得られる利益とは大きな差異が生じてしまいます。
簡単に言えば「基準価格(分配金再投資)」を使えば、あらゆる投資信託の実力を比較可能ですが、実際に私たちが得られた利益とは違う!ってことです。
では、私たちにとって最も大切な「実際に得られた利益」はどうやったらわかるのでしょうか?
それは、設定日に購入したと仮定して計算すればすぐにわかります。
設定日に100万円分購入したら?
2009年8月27日の設定日にこの「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」を100万円分購入したとします。
そして2024年11月1日までの約13年間保有したと仮定して計算してみました。
ザックリとした計算ですが上記のような金額・口数等を考えてみました。
その結果、100万円が13年間で1700万円ちょっとになっています。
これを先ほどの月報に記載されていた騰落率と比較してみます。
ファンドの設定来騰落率は2231.8%です。
100万円購入したら2200万円以上になっているはずです。
- 実際に得られた利益:100万円 → 1700万円
- 月報に記載されたもの:100万円 → 2200万円!!
- 野村AMがいらん事しなければ:100万円 → 2790万円w
500万~1000万円の差ってかなり大きいですよね。
この結果からわかること
ランキング1位に輝いたファンドをディスりたいわけではありません。
高コストのアクティブファンドですが「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」はランキング1位に輝くような実力をともなった素晴らしいファンドです。
13年で実質17倍になっているのですから、これを買って保有している人は文句なんてないでしょう。
しかし、この分析から次の2点は確実に言えるはずです。
高コストは利益を減らす!
ベンチマークは13年で28倍になりました。
対して、野村AMに毎年1.65%を超えるような高いコストを支払ってしまうと、実際に私たちが得られる利益は17倍にしかならないのです。
↑交付運用報告書(3p)
いかに高いコストが、私たちが得られたであろう利益を減らしているのか良くわかる結果です。
税金も利益を減らす!
税金を全く考慮していない基準価格(分配金再投資)で見ると、100万円が2200万円以上になっていました。
しかし、分配金に実際の税金がかかってしまうと、それが500万円減って1700万円にしかならないのです。
この税金も確実に私たちの得られる利益を減らしてしまいます。
特に株の配当金や、投資信託の分配金(特別分配金を除く)は、その全てが利益です。
税金がかかるのは利益の部分ですから、配当金・分配金を出してしまうと、その分得られる利益が減ってしまうのがよく理解できる結果ですね。
低コスト・無分配のものを買うべき!!
ランキング1位に輝くような素晴らしい投資信託だったとしても、高コストと分配に対する税金で私たちが得られる利益が減ってしまうのです。
そして、ランキング1位に輝く素晴らしいファンドを事前に見抜くことは誰にもできません!
(このファンドを当時買って今まで保有できてる人が何人いるのでしょうか?)
だとしたら、私たちが出来る最良のことは、
- 低コストなファンドを買う!
- 分配金を出さない(無分配)ファンドを買う!
ってことになるはずです。
まとめのようなもの。
結局、オルカンのような低コストで無分配のファンドを買うべきだという、いつもの結論になりました。
私はインデックス投資家ですが、今回の「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」のような高コストアクティブファンドがオルカンを凌駕するような成長を遂げることを否定しません。
オルカンのような低コストインデックスファンドは、平均点を取りに行く手法です。
それは優等生でもスポーツ万能でもなく、クラスにいても気づかれないような地味な奴ですが、劣等生になることは決してありません。
なので私はこれからも「オルカン」をオススメしていきます。
オルカンは過去13年で約5倍(円建て)になりました。「ポートフォリオにちょっとだけ半導体関連を組み込もう!」なんてのは趣味の範囲でどうぞ!
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