MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)をベンチマークとする2つの投資信託。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):通称「オルカン」
- 楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド:通称「楽天・オールカントリー」
これら2つの投資信託は、どちらが新NISAで購入するのに相応しいのか?
最新の2024年4月の月報の内容を確認してみました。
騰落率と純資産総額
騰落率と純資産総額の変化を確認します。
直近3カ月で、どちらも10.9%の上昇と絶好調です。
どちらのファンドもベンチマークとの乖離(ベンチマークとの差異)も少なく、大きな問題はありません。
インデックスファンドはベンチマークと連動して動くのが理想です。
その意味ではどちらのインデックスファンドも、運用がとても素晴らしいことがわかります。
楽天オールカントリーは、昨年10月の設定から6か月が経過したことで、過去6か月間の騰落率が確認できるようになりました。
ベンチマークとオルカンに対して0.1ポイントのマイナス。
目くじらを立てるほどではありませんが、今後の変化に注目していきます。
しかし、過去1年間の騰落率には驚かされます。
オルカンを買って保有しているだけで40%の利益が出ています。
過去30年間のACWIの年間平均リターンはドル建てで約8%、円建てで約10%です。
それに比べれば1年間で40%の利益が、いかに異常なことか理解できると思います。
株価の調整がいつ来てもおかしくないと、再度気を引き締めたいですね。
純資産総額の状況です。
純資産総額の増加(売れているか?)はオルカンが圧倒的です。
オルカンは楽天の10倍以上も売れています。
しかもオルカンは4月末についに月末での純資産総額3兆円を達成しています!素晴らしい!!
楽天オールカントリーは設定から半年で純資産総額1000億円を突破しています。
こちらも素晴らしい!!
中身の確認
それぞれの投資信託の中身を確認してみます。
まずは国別比率の比較です。
楽天オールカントリーは前回の比率も載せています。
オルカンは相変わらずベンチマークであるACWIとの乖離は小さいです。
楽天オールカントリーも2位以下の国の比率は、ほぼ誤差と言えそうです。
米国株の比率も60%を超えてきました。
順調に買い進めているようです。
このまま継続して欲しいところです。
それぞれの採用銘柄の比率も確認します。
相変わらず楽天オールカントリーの1位には、新興国株のETFである「IEMG」が居座っています。
しかも悪いことに前回よりもその比率が高くなっています。
楽天オールカントリーの月報には、
ベンチマークとの連動性を維持するため、株価指数との連動をめざすETF(上場投資信託証券)、株価指数を対象とした株価指数先物取引を利用することがあります。
楽天オールカントリー 月次レポート 2024年4月
と明確に記載されていますので、ETFを使うこと自体は悪いことではありません。
また、設定されたばかりの投資信託では、ETFを使ってベンチマークとの連動を目指す運用を行うことも多々あります。
しかし、確実に(←ここ重要)そのETF分のコストが上乗せされてしまいます。
(まあ、IEMGの経費率は0.09%ですから、そんなに大きくないですが。)
いずれにしても投資信託の中にETFがあると、そのETF分の信託報酬も必要になるので、一般的に全体のコストは高くなりがちです。
楽天オールカントリーはこのまま新興国株の大半をETFで運用するのか?
それとも現物株運用に切り替えるのか?
注目しています。
ちなみにオルカンはETFでの運用はしていません。
オルカンのコスト圧縮に関する記事
日経新聞に「追跡オルカン」という記事が載りました。
オルカンを実際に運用している人たちが、どのようにしてファンドを切り盛りしているのか?
その一端が垣間見えます。
コスト削減のために
特に海外株式については、1銘柄ごとに売買すると手数料がかさむので、自社の運用モデルを作成して特性の近い大型株を売買することで、コストを圧縮しているんだとか。
売買手数料削減のため、複数の証券会社に手数料を提示してもらい、安い証券会社を選ぶなどして、常にコスト削減に努めているそうです。
指数との連動も重要
コストの削減だけではなく指数との連動も重要です。
今回の記事で初めて知りましたが、各企業が配当金を出すことによって株価が下がる「配当落ち」をカバーするために先物取引を使っているそうです。
対象インデックスとの連動を維持するため、先物取引等を利用し株式の実質投資比率が100%を超える場合があります。
オルカン 月報 2024年4月
オルカンの月報には⇧このように「先物取引等を利用」と記載されていて、どうやって利用しているのか気になっていたんですね。
とにかくコストも削減し、かつ、指数との連動も維持する。
記事中に、
「指数との誤差(トラッキングエラー)をいかに小さくできるかが腕の見せどころ」
「ファンドには規模の経済が働く。規模が大きくなればなるほどコストが下がり、投資家からの信頼度も上がる」
長洲雄大シニアファンドマネジャー
という担当マネージャーの発言があり、それを聞いてますます「オルカン愛」が深まりました。
日経新聞の無料版で読めます。
今回の記事は会員限定ですが、無料会員に登録すれば購読可能です。
興味のある方は、登録してみてはいかがでしょうか。
2つのファンドの評価は?
さて、2024年4月の月報の内容から2つの投資信託(ファンド)を比較してみました。
オルカンは相変わらずベンチマークとの乖離も少なく、騰落率もベンチマークにピッタリと連動しています。
インデックスファンドの理想的な運用を継続していることがうかがえます。
インデックスファンドの理想形は、ベンチマークとまったく同じ動きをすることです。
ベンチマークと同じ中身であれば同じ動きをしますので、ロスが少なく手間がかからず手数料が安くなります。
反対にベンチマークと中身が大きく違うと、違う動きをしがちですので、ロスが多く手間暇がかかる分手数料が高くなります。
手数料の差は騰落率の差になって、私たちの得られる利益の差になります。
その点、楽天オールカントリーはオルカンに比較すると、運用内容で指数との差異が大きいと判断せざるを得ません。
設定から半年で1000億円を突破しているように、とても人気のあるファンドです。
その人気に応えるべく、今後どのように運用していくのか注目する必要があります。
ということで、今回も「オルカンの勝利」と評価します。
最後に
まったく同じベンチマークへの連動を目指している2つの投資信託を比較することで、それぞれの特徴や優劣が良く理解できます。
楽天オールカントリーは悪い投資信託なので買うべきではない、と言いたいのではありません。
しかし、最低1年間は運用して、その結果を見てみないと(特にコスト面の)判断は難しいと思います。
インデックスファンドは購入した後、数十年という長期間保有することになります。
小さな差でも数十年経つと、かなり大きな差となります。
私としては、楽天オールカントリーがオルカンを脅かす存在になってもらって、この先ずっと切磋琢磨していって欲しいと思っています。
今のままオルカンが圧勝してしまうと、どこかで驕りが発生して運用で重大なミスを犯してしまうかもしれません。
(そんな心配は杞憂に終わるでしょうが。)
とにかくライバルがいて緊張感があることは、成長に欠かせないことですので、楽天オールカントリーの一層の奮起に期待です。
追跡オルカンの記事は(上)となっているんで、今後(中)(下)も特集されるんですかね??
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